おもろいことしようや…
地元で公開されていた「ディストラクション・ベイビーズ」を
鑑賞してきましたので、本日はこの作品をレビューします!
愛媛の閑静な港町で日々ケンカに明け暮れていた泰良は、
突如家出しその先でも誰彼構わずケンカを吹っかける。
そんな彼の暴力に楽しみを見出した同年代の高校生・
裕也は彼に便乗し通り魔的に通行人を襲い、車を奪う。
たまたま乗車していたキャバクラ嬢・那奈を人質に、
三人は四国ケンカ巡りと称して当てもなく走り回るが…
というのがおおまかなあらすじ。
これが長編映画デビュー作という真利子哲也監督の下、
一都市を舞台に吹き荒れる暴力の嵐を描いた本作品。
オープニングから鳴り響くディストーションギターの音色
からもわかる通り、本作のスコアは元「ナンバーガール」の
向井秀徳監督ということで、当然タイトルは代表曲から
取ってたのねとどうでもいい納得と安心感をまず覚えます。
さて、主人公の泰良(作品の表記上はこうなってるけど
この名前が作中出てきたかはちょっと記憶にない)は
とにかくキチガイとしか形容しようがないケンカキチガイで、
四六時中ケンカしてる以外は公園で寝泊まりしてゴミ
漁りやスーパーの中で堂々と無銭飲食をかますという、
社会不適合者以上にまず頭の病気を疑いたくなります。
しかしそんなことも置いといて、監督が徹底的なリサーチも
行いリアルを追求したというケンカ描写が面白く、単純な
殴り合いによる男の世界は容赦なく原始本能を呼び起こし、
初めはその辺のバンドマン相手に苦戦するも徐々に
経験値を積むことで輩、ヤクザと徐々にレベルアップしていき
カウンター等のスキルも習得していく過程を丁寧に見せて
いくのはかつての「くにおくん」のようなゲーム脳も刺激、
圧倒的な高揚感と共に作品へ没入していくこととなります。
ところが鬱憤の溜まった気弱な高校生・裕也、万引き癖の
あるひねたキャバ嬢・那奈との奇妙な共生関係が始まった
途端に作品は不快指数を加速度的に上げ始め、裕也が
ストレスの捌け口として徹底的に弱者をいたぶろうとする姿は
同じ「快楽のための暴力」の描写には違いないのに、二人の
うち一方にだけヘイト値が貯まっていく描き分けも面白い。
大きくなり過ぎた力と狂った歯車からは当然軋轢が生まれ、
それが事件としてマスコミに取り上げられるのも必然で、
そこからやがて当事者によって捻じ曲げられた真実と、
一部分だけを切り取った報道によって浮き彫りにされる、
ネット上に蔓延する各人の都合の良い解釈と身勝手な
不寛容にまでテーマが及んでしまい、手広く色気を使い
すぎたかはたまた着地点を見失ったようにも錯覚します。
しかし如何に世間が騒ぎ、揺れようとも一切のブレを
見せないのが泰良という男で、彼は言うなれば「文化
不毛の地=ケンカの名産地」から生じた特異点であり、
言い換えるならば存在そのものが既に「結果」なのです。
アレがムカつく、アイツが悪いといった各々の「理屈」が
入り込み、それを巡って人間があくせくするから不快
なのであって、空が青いように、海が塩辛いように、
大自然の摂理を前にした時、人に都合の余地などない
という仏教の悟りにも近い教えを、世間対泰良とでも
言うべきミクロな構図とその対比で示したのはお見事。
いや、これすらも私の都合と解釈に過ぎないんですが…
「孤高の遠吠」もそうだったんですが、最近の邦画は
インディペンデント色とバイオレンス色を強めた、
少ない予算でどれだけ面白い映画を作れるかという
原点に立ち返った作品が増えてきて、個人的には
この空気がすごく合っているので嬉しく思います。
派手なCGでエイリアンやらヒーローやら出さなくても、
地元の輩がケンカしているだけで十分面白いなら
それに越したことはないし、改めてこの分野が
模索されている感じがして今後がとても楽しみです!
鑑賞してきましたので、本日はこの作品をレビューします!
愛媛の閑静な港町で日々ケンカに明け暮れていた泰良は、
突如家出しその先でも誰彼構わずケンカを吹っかける。
そんな彼の暴力に楽しみを見出した同年代の高校生・
裕也は彼に便乗し通り魔的に通行人を襲い、車を奪う。
たまたま乗車していたキャバクラ嬢・那奈を人質に、
三人は四国ケンカ巡りと称して当てもなく走り回るが…
というのがおおまかなあらすじ。
これが長編映画デビュー作という真利子哲也監督の下、
一都市を舞台に吹き荒れる暴力の嵐を描いた本作品。
オープニングから鳴り響くディストーションギターの音色
からもわかる通り、本作のスコアは元「ナンバーガール」の
向井秀徳監督ということで、当然タイトルは代表曲から
取ってたのねとどうでもいい納得と安心感をまず覚えます。
さて、主人公の泰良(作品の表記上はこうなってるけど
この名前が作中出てきたかはちょっと記憶にない)は
とにかくキチガイとしか形容しようがないケンカキチガイで、
四六時中ケンカしてる以外は公園で寝泊まりしてゴミ
漁りやスーパーの中で堂々と無銭飲食をかますという、
社会不適合者以上にまず頭の病気を疑いたくなります。
しかしそんなことも置いといて、監督が徹底的なリサーチも
行いリアルを追求したというケンカ描写が面白く、単純な
殴り合いによる男の世界は容赦なく原始本能を呼び起こし、
初めはその辺のバンドマン相手に苦戦するも徐々に
経験値を積むことで輩、ヤクザと徐々にレベルアップしていき
カウンター等のスキルも習得していく過程を丁寧に見せて
いくのはかつての「くにおくん」のようなゲーム脳も刺激、
圧倒的な高揚感と共に作品へ没入していくこととなります。
ところが鬱憤の溜まった気弱な高校生・裕也、万引き癖の
あるひねたキャバ嬢・那奈との奇妙な共生関係が始まった
途端に作品は不快指数を加速度的に上げ始め、裕也が
ストレスの捌け口として徹底的に弱者をいたぶろうとする姿は
同じ「快楽のための暴力」の描写には違いないのに、二人の
うち一方にだけヘイト値が貯まっていく描き分けも面白い。
大きくなり過ぎた力と狂った歯車からは当然軋轢が生まれ、
それが事件としてマスコミに取り上げられるのも必然で、
そこからやがて当事者によって捻じ曲げられた真実と、
一部分だけを切り取った報道によって浮き彫りにされる、
ネット上に蔓延する各人の都合の良い解釈と身勝手な
不寛容にまでテーマが及んでしまい、手広く色気を使い
すぎたかはたまた着地点を見失ったようにも錯覚します。
しかし如何に世間が騒ぎ、揺れようとも一切のブレを
見せないのが泰良という男で、彼は言うなれば「文化
不毛の地=ケンカの名産地」から生じた特異点であり、
言い換えるならば存在そのものが既に「結果」なのです。
アレがムカつく、アイツが悪いといった各々の「理屈」が
入り込み、それを巡って人間があくせくするから不快
なのであって、空が青いように、海が塩辛いように、
大自然の摂理を前にした時、人に都合の余地などない
という仏教の悟りにも近い教えを、世間対泰良とでも
言うべきミクロな構図とその対比で示したのはお見事。
いや、これすらも私の都合と解釈に過ぎないんですが…
「孤高の遠吠」もそうだったんですが、最近の邦画は
インディペンデント色とバイオレンス色を強めた、
少ない予算でどれだけ面白い映画を作れるかという
原点に立ち返った作品が増えてきて、個人的には
この空気がすごく合っているので嬉しく思います。
派手なCGでエイリアンやらヒーローやら出さなくても、
地元の輩がケンカしているだけで十分面白いなら
それに越したことはないし、改めてこの分野が
模索されている感じがして今後がとても楽しみです!
スポンサーサイト